複素数
数学における複素数(ふくそすう、英: complex number)は、実数の対 a, b と 1 と線型独立な(実数ではない)要素 i の線型結合a + bi の形に表される数(二元数:実数体上の二次拡大環の元)で、基底元 i はその平方が −1 になるという特別な性質を持ち虚数単位と呼ばれる。
複素数全体の成す集合を太字の C あるいは黒板太字で ℂ と表す。C は、実数全体の成す集合 R と同様に、可換体の構造を持ち、とくに R を含む代数的閉体を成す。複素数体はケイリー=ディクソン代数(四元数、八元数、十六元数など)の基点となる体系であり、またさまざまな超複素数系の中で最もよく知られた例である。
複素数の概念は、一次元の実数直線を二次元の複素数平面に拡張する。複素数は自然に二次元平面上に存在すると考えることができるから、複素数全体の成す集合上に自然な大小関係(つまり全順序)をいれることはできない。すなわち C は順序体でない。
ある数学的な主題や概念あるいは構成において、それが複素数体を基本の体構造として考えられているとき、そのことはしばしばそれら概念等の名称に(多くは接頭辞「複素-」を付けることで)反映される。例えば、複素解析、複素行列、複素(係数)多項式、複素リー代数など。
概観
定義
0 以外の任意の実数と(実数体上)線型独立な i は i2 = −1 を満たすものとするとき、これを虚数単位という。a, b を実数として形式的に a + bi の形に書かれる式を一種の数と見做して複素数と呼ぶ。
任意の実数 a は a + 0i と同一視して、実数の全体は自然に複素数の全体に埋め込むことができる(この埋め込みは、四則演算および絶対値を保つという意味で、位相体の埋め込みである)。また任意の純虚数 bi は 0 + bi に同一視して複素数となる。
複素数 z = a + bi に対して、
- z の実部 (real part) を a で定義し、Re(z) あるいは ℜ(z) で表す。
- z の虚部 (imaginary part) を b で定義し、Im(z) あるいは ℑ(z) で表す。ここで注意したいのは、虚部は実数であって、虚数単位を含めた純虚数を言うのではない。
- 虚部が 0 でない複素数を虚数という。つまり、実数でない複素数のことである。
- 実部が 0 である虚数を純虚数という。
- 実部、虚部がともに整数のときガウス整数といい、その全体を Z[i] と書く。
- 実部、虚部がともに有理数のときガウス有理数といい、その全体を Q(i) と表す。
複素数平面
詳細は「複素平面」を参照
複素数 z = x + iy (x, y ∈ R) は2つの実数の組 (x, y) ∈ R2 に1 : 1 に対応する。
複素数全体からなる集合 C を、複素数が座標平面上の点を表すものと考えてこれを複素数平面または単に数平面という。カール・フリードリヒ・ガウスに因んでガウス平面あるいはジャン゠ロベール・アルガンに因んでアルガン図などと呼ぶ。これと異なる語法として、C は複素数体上一次元のアフィン線型多様体であるので、複素直線とも呼ばれる。
座標平面と考えたときの x軸(横軸)を実軸 (real axis)、y 軸(縦軸)を虚軸 (imaginary axis) と呼ぶ。
複素数 z, w に対して
- d(z, w) = |z − w|
と定義すると、(C, d) は距離空間となる。この距離は、座標平面におけるユークリッド距離に対応する。複素平面は複素数の形式的な計算を視覚化でき、数の概念そのものを拡張した。
複素数球面
複素関数論においては、複素平面 C を考えるよりも、無限遠点を付け加えて1点コンパクト化した C ∪ {∞} を考える方が自然であり、議論が透明になることもある。複素数球面またはリーマン球面と呼ばれ、以下に示すように2次元球面 S2 と同相である。無限遠点にも幾何的な意味を与えることができる。
複素数平面 C を、xyz-座標空間内の xy-平面とみなし、z ≥ 0 に含まれ xy-平面に原点で接する球面 x2 + y2 + (z − 1)2 = 1 を考える。この球における原点の対蹠点 (0, 0, 2) を北極と呼ぶことにする。任意の複素数 wに対し w と北極を結んだ線分はこの球面と、両端以外の1点で必ず交わり、それを f(w) と書けば f は単射である。f の像は、全球面から射影の中心である北極を除いた部分である。そこで、北極は無限遠点に対応すると定めることにすると、この球面は C ∪ {∞} と一対一対応する。
この関数 f は、複素平面上の円を円に写し、複素平面上の直線を、無限遠点を通る円に写す。このことは、複素平面上の直線と円はほぼ同等であることを表している。
複素函数
詳細は「複素解析」を参照複素変数の函数の研究は複素函数論と呼ばれ、純粋数学の多くの分野のみならず応用数学においても広汎な応用がもたれる。実函数論や数論等における命題の最も自然な証明が、複素解析の手法によってなされることもしばしば起こる(例えば素数定理。あるいは代数学の基本定理のルーシェの定理による証明)。実関数が一般に実2次元のグラフとして視覚的に理解することができたのとは異なり、複素関数のグラフは実4次元となるから、その視覚化に際しては2次元や3次元グラフに色相(もしくは明度や彩度、輝度)による次元を加えたり、あるいは複素函数の引き起こす複素数平面の動的な変換をアニメーションで表したりすることが有効になる。
実解析における収束級数や連続性などの概念は、いわゆるε-δ論法において実数の絶対値を用いたところを複素数の絶対値で置き換えることにより、複素解析においても自然に考えられる。例えば、複素数列が収束するための必要十分条件は、その実部および虚部の成す実数列がともに収束することである。もう少し抽象的な観点では、C は距離函数
が成立する。実解析と同様に、収束の概念はいくらかの初等関数の構成において用いられる。
歴史
負の数の平方根について、いささかなりとも言及している最も古い文献は、数学者で発明家のアレクサンドリアのヘロンによる『測量術』(Stereometrica) である。そこで彼は、現実には不可能なピラミッドの錐台について考察しているものの、計算を誤り、不可能であることを見逃している。
16世紀にイタリアの数学者カルダノやボンベリによって三次方程式の解の公式が考察され、特に 3 つの異なる実数を解に持つ場合において解の公式を用いると、負の数の平方根を取ることが必要になることが分かった。当時は、まだ、負の数でさえあまり認められておらず、回避しようと努力したが、それは不可能なことであった。
17世紀になりルネ・デカルトによって、虚 (imaginary) という言葉が用いられ、虚数と呼ばれるようになった。デカルトは作図の不可能性と結び付けて論じ、虚数に対して否定的な見方を強くさせた。
その後、ウォリスにより幾何学的な解釈が試みられ、ヨハン・ベルヌーイやオイラー、ダランベールらにより、虚数を用いた解析学、物理学に関する研究が多くなされた。
複素平面が世に出たのは、1797年にノルウェーの数学者カスパー・ベッセル(Caspar Wessel) によって提出された論文が最初とされている。しかしこの論文はデンマーク語で書かれ、デンマーク以外では読まれずに1895年に発見されるまで日の目を見ることはなかった。1806年にジャン=ロベール・アルガン(Jean-Robert Argand) によって出版された複素平面に関するパンフレットは、ルジャンドルを通して広まったものの、その後、特に進展は無く忘れられていった。
1814年にコーシーが複素関数論を始め、複素数を変数に取る解析関数や複素積分が論じられるようになった。
1831年に、機は熟したと見たガウスが、複素平面を論じ、複素平面は複素平面として知られるようになった。ここに、虚数に対する否定的な視点は完全に取り除かれ、複素数が受け入れられていくようになる。実は、ガウスはベッセル(1797年)より前の1796年以前にすでに複素平面の考えに到達していた。1799年に提出されたガウスの学位論文は、今日、代数学の基本定理と呼ばれる定理の証明であり、複素数の重要な特徴付けを行うものだが、複素数の概念を表に出さずに巧妙に隠して論じている。
他分野における複素数の利用
複素数 A と実数 ω により定まる、一変数 t の関数 Aeiωt は時間 t に対して周期的に変化する量を表していると見なすことができる。周期的に変化し、ある種の微分方程式を満たすような量を示すこのような表示はフェーザ表示と呼ばれ、電気・電子工学における回路解析や、機械工学・ロボティクスにおける制御理論、土木・建築系における震動解析で用いられている。なお電気回路上では電流(の密度)「i」と混同を避けるため、虚数単位は「j」を用いることが多い。
物理における振動や波動など、互いに関係の深い2つの実数の物理量を複素数の形に組み合わせて表現すると便利な場面が多いため、よく用いられる。
量子力学の数学的な定式化には複素数の体系が本質的な形で用いられている。ものの位置と運動量とはフーリエ変換を介して同等の扱いがなされ、波動関数たちのなす複素ヒルベルト空間とその上の作用素たちが理論の枠組みを与える。
「量子力学の数学的定式化」も参照複素数の拡張
詳細は「多元数」を参照複素数とは実数を係数とする実数単位 1 と虚数単位i の線形結合であるが、これに新たな単位を有限個加えて通常の四則演算ができる数の体系(体)を作ることはできない。実数体 R から拡張して C を得る過程はケーリー=ディクソンの構成法と呼ばれる。この過程を推し進めて、より高次元の四元数体 H および八元数体 O が得られ、これらは実数体上のベクトル空間としての次元がそれぞれ 4 および 8 である。この文脈において複素数は「二元数」(binarions) とも呼ばれる。
注意すべき点として、実数体にケーリー=ディクソンの構成法を施したことにより、順序に関する性質が失われていることである。より高次元へ進めば実数や複素数に関してよく知られた性質が失われていくことになる。四元数は唯一の非可換体であり(つまり、ある2つの四元数 x, y に対して x·y ≠ y·x となることが起きる)、八元数の乗法は(非可換なばかりでなく)結合性も失われる(つまり、適当な x, y, z に対して (x·y)·z ≠ x·(y·z) となりうる)。一般に、実数体 R 上のノルム多元体は、同型による違いを除いて、実数体 R, 複素数体 C, 四元数体 H, 八元数体 O、の4種類しかない(フルヴィッツの定理)。ケーリー=ディクソンの構成法の次の段階で得られる十六元数環ではこの構造は無くなってしまう。
ケーリー=ディクソンの構成法は、C(を R-線型環、つまり乗法を持つ R-線型空間と見ての)の正則表現と近しい関係にある。すなわち、任意に複素数 w をとるとき、R-線型写像fw を
とすると、これは線型代数学でよく知られた仕方によって(適当な基底を選ぶことにより)、行列で表現することができる。順序付けられた基底 (1, i) に関して fw は実二次正方行列
で表現される(つまり、行列表現の節で述べた行列に他ならない)。これは C の標準的な線型表現だが、唯一の表現ではない。実際、
なる形の任意の行列はその平方が単位行列の −1 倍、すなわち J2 = −I を満たすから、行列の集合
もまた C に同型となり、R2 上に別の複素構造を与える。これは線型複素構造の概念によって一般化することができる。
超複素数は R, C, H, O もさらに一般化するもので、例えば分解型複素数環は剰余環 R[x]/(x2 − 1) である(複素数は剰余環 R[x]/(x2 + 1) であった)。この環において方程式 a2 = 1 は4つの解を持つ。
実数体 R は有理数体Q の通常の絶対値による距離に関する完備化である。Q 上の別の距離函数をとれば、任意の素数p に対して p-進数体Qp が導かれる(つまりこれは実数体 R の類似対応物である)。オストロフスキーの定理によれば、この R と Qp 以外に Q の非自明な完備化は存在しない。Qp の代数的閉包 Qp にもノルムは伸びるが、C の場合と異なり、そのノルムに関して Qp は完備にならない。Qp の完備化 Cp は再び代数的閉体であり、C の類似対応物として p-進複素数体と呼ぶ。
体 R, Qp およびそれらの有限次拡大体は、すべて局所体である。
Aimer RE:I AM
Real実 Imaginary虚 zabi家 と axis と La+
18 12 R L 右 左 う さ ③ ⑪ 尺R 定規L
RaEl 太陽神 Ima 今 gamI 神
ラー (Ra) 、あるいはレー (Re) は、エジプト神話における太陽神である。
I am that I am