衝
衝(しょう、opposition)とは、位置天文学や占星術において、ある観測点(通常は地球)から太陽系天体を見た時に、その天体が太陽と正反対の位置にある状態を指す言葉である。厳密には、地球から見たその天体と太陽の黄経の差が180度となる瞬間として定義される。また、二つの惑星が太陽をはさんで正反対の位置にある場合に「互いに衝の位置にある」と言う場合もある。衝はその定義より、外惑星のみに起こる。衝を表す記号は ☍ である。
惑星や彗星、小惑星が衝の位置にある時期は、以下のような理由からその天体の観測に最適な期間である。
- 衝の時期にはその天体は日没近くに上り、深夜頃に南中して日の出近くに沈むため、ほぼ一晩中観測することができる。
- 衝の位置にある天体は地球との距離が最も近いため、視直径が最も大きく光度も最も明るくなる。
- 荒い表面を持つ天体の場合、衝の時期には衝効果によって天体表面からの反射光が増えるために明るく見える。
地球の周囲を公転する月の場合は満月の時に太陽の正反対の衝の位置となるが、月の場合には特にこれを望と呼ぶ。月が黄経だけでなく黄緯方向についても完全に太陽の正反対の位置に来ると月食が起こる。
外惑星との関係
地球から見てある外惑星が衝の位置にある時、その外惑星上の観測者から地球を見ると地球は内合の位置にある。
合 (天文)
内惑星・外惑星との関係
ある惑星 A 上の観測者から見て、それより内側を公転する惑星 B が太陽の真後ろに位置している時、惑星 B は惑星 A から見て外合の位置にあると言う。これに対して、惑星 A と惑星 B が太陽について同じ側に一直線に並んでいる時、惑星 B は惑星 A から見て内合の位置にあると言う。惑星 A から見て惑星 B が内合の時、惑星 B 上の観測者から見ると惑星 A は衝の位置にある。
内合・外合という語は地球から見た内惑星である水星と金星について専ら用いられるが、一般に任意の二惑星について、外側を公転する惑星から内側の惑星を見た場合の内合・外合を同様に定義できる。例えば地球から見て火星が衝の時、火星から見ると地球は内合である。
太陽系の外惑星や小惑星・彗星については、地球から見て太陽と同じ方向にある場合に「合の位置にある」と単純に言うことが多い。月は新月(朔)の時に太陽と合となる。
黄経の合・赤経の合
一般に太陽系天体の合は複数の天体の黄経が同じ値をとる状態を指すが、赤経の値が等しい場合にも合と呼ぶ場合がある。両者を特に区別する必要がある場合にはそれぞれ黄経の合、赤経の合と呼ぶ。黄道と天の赤道は23.4°傾いているため、通常は黄経の合と赤経の合は完全に同時には起こらないが、ほぼ近い日時に起こる。ただし三連会合は黄経もしくは赤経のいずれか一方でしか起こらない。合の状態にある惑星は天球上で非常に近い位置にあり、通常は一方の天体がもう一方の天体の北または南を通過するように見える。
掩蔽・通過・食
黄経の合の状態にある二つの天体が黄緯も同じ値をとる場合(または赤経の合の状態にある二天体が赤緯も同じ値をとる場合)には、地球に近い方の天体がもう一方の天体の手前を通ることになる。このような時には両者によって掩蔽現象が起こる。片方の天体がもう片方の天体の影に入る場合を食と呼ぶ。例えば、月が地球の影と合の状態になり、影の中に入る現象を月食と呼ぶ。手前の天体の視直径が後ろの天体の視直径よりも十分に小さい場合には通過と呼ぶ。例として、水星が太陽と内合の状態になって太陽の手前を通過する現象を水星の太陽面通過と呼ぶ。金星と太陽で起こる同様の現象を金星の太陽面通過と呼ぶ。手前の天体が後ろの天体より大きく、後ろの天体が完全に隠される場合には掩蔽と呼ばれる。掩蔽の例は月が地球と太陽の間に入って太陽の一部または全部が隠される日食である(日食には食という名前が付いているが掩蔽に分類される)。太陽や月以外の天体による掩蔽は非常に稀な現象である。月による惑星の掩蔽は割合頻繁に起こっており、毎年数回地球上から観測できる。
歴史上の合
占星術師たちは、合と歴史的な変事を結び付けてきた。こうした考えは『大会合の書』を著したアブー・マーシャルらイスラム世界の占星術師たちによって発展させられたもので、12世紀ルネサンスを通じて西洋占星術にも導入された。合は周期性を持つため、年代の整理に用いようとするものも現れた(占星年代学)。
歴史上、よく知られている合や社会的な騒擾を惹き起こした合としては、以下の例を挙げることが出来る。
- 紀元前7年 - 木星、土星、火星の三重合
- 1186年 - 天秤宮に全ての惑星が集まった。
- 1345年11月20日 - 宝瓶宮で木星、火星、土星の合が起こる。
- 1484年 - 天蠍宮で土星、木星、火星の三重合が起こった。
- 1524年2月 - 双魚宮に多くの星が集まり、幾つもの合が起こった。
- 1499年の暦書で、ヨハネス・シュテフラー(Johannes Stöffler)が、この年に第2のノアの大洪水が起こると予言し、大きな騒ぎになった。
- 1584年 - 双魚宮で木星と土星の合が起こった。
- 占星術師キュプリアヌス・レオウィティウスは、『20年間の予言』(1564年)において、この合を理由のひとつとする形で、世界が終わると予言し、当時非常に話題になった。
- 1962年2月 - 8つの惑星の会合
- インドでは大災厄が起こるとされてパニックになり、ネルー首相が鎮静化のための声明を出す事態にまでなった。
北斗剛掌波!! ヾ(╹︿╹;)ノ